Vol.22_正確でないデータをたくさん集めるとどうなるか? 全数PCR検査に思うこと

かつて近しい人がウィルス性の重い疾患にかかったことがあり、花粉30μm、細菌2μmに対し0.1μm程度しかないウィルスの存在を調べることの難しさについても多少は知っていたつもりです。

ちなみに光学顕微鏡で見える大きさの限界は約 0.2 µmですので、特殊な巨大ウィルス(ミミウイルスなど)以外は直接見ることができません。

当時行われていた抗体検査にしても、ウイルスに対抗して体内で作られる抗体が存在することがわかるだけで、

現在ウイルスに感染していることとは完全にイコールではありません。

またコロナ以降有名になったPCR検査についても、前々からリケジョの娘から「実験でやらされたけど結構難しいんだよね」という話は聞いていました。

PCRというのは「ポリメラーゼ連鎖反応」の略称で、DNAサンプルの特定領域を数百万〜数十億倍に増幅させる反応または技術のことだそうで、バイオ系の研究ではもともとよく使われるものなんだそうです(さらにRNA(DNAの鋳型みたいなもの)型のコロナウイルスは「逆転写」という作業も必要になります)。

さてそんなPCR検査、世界の標準と比べて日本の検査数が少ないことが話題になっています。

世論は「世界から遅れている」「政府が検査数を絞って意図的に感染者数を少なく見せている」「全数検査すべき」などなど、大体ネガティブなものが多いですね。

逆に、「マスクは不要」(私もごく初期そう思ってました)とか、「ワクチンも不要」、「コロナはただのカゼ」、という方もそれ相応にいるみたいです。

正直、百家争鳴状態でなにが正しいのかわからないので、「マスク・手洗い・消毒・検温」あとは人混みには仕事のこと以外ではなるべく行かず、あとは普通に暮らすことにしましたが、頭がこんがらがるばかり・・

そんな私が「あれ? こういうことかも?」と思ったのは1月頃に「とある芸人さんがPCR陽性で2週間休みますが、体調は異常ありません。」というニュースに触れたときです。

確かに「感染しても無症状」な人もいる(調べたところ17〜20%)わけですから注意するに越したことはありません。

ただ、ちょっと気になったのは、ラジオで別の芸人さんが「このイベントは関係者全員PCR受けてます」という話を前に聞いていたこと。

さらに、分からないなりに愛読している科学雑誌「Newton」に書かれていた「ベイズの定理」の解説を見て、ようやく何がおかしいのかはっきりしてきました。

ベイズの定理というのは一言でいうと、「結果(B)が分かっているときの、原因(A)の確率を求める式」です。

「今わかっているデータ(だけ)から、それがどのくらいもっともらしいかを測る方法」といえばいいんでしょうか。

実用では、「ちゃんとしたメールとスパムメールを分けるフィルタ」にこの定理が実装されてみなさんのお役に立ってます。

このベイズの定理で、日本国民が全員PCRを受けた時に期待できる陽性適中率(陽性反応出ちゃった人のうち何割が本当に感染しているのかの確率)を計算してみます。

前提として

・日本人の1%、125.6万人が現在コロナに感染しているとします。

(実際の累積の感染者は43.5万人うち回復者は41.2万人です)

・PCR検査の偽陽性率(非感染なのに陽性反応出ちゃった)はほぼ実数の10%とします。

これを元にベイズの定理に当てはめて計算してみると

0.01×0.9/(0.01×0.9+0.99×0.1)=0.0833 つまり8.3%の的中率(低くっ!)

日本人の5%(628万人)が感染して32%、10%(1,256万人:ほぼ東京都民全員)が感染したところでやっと的中率は50%になります。

紙数の関係もありますし、めんどくさい説明は省きますが、

「一定の確率で起きる事柄のサンプル数を増やせば増やすほど爆発的に確率が下がる」

ということが分かっていただけるんじゃないかと思います。

ですので、

1,(必要な方がPCR受けられないのは論外ですが)一定の症状がある人に限定してPCR受けてもらう。

(もし半分怪しい人だけがうけるなら陽性的中率は0.50×0.9/(0.50×0.9+0.99×0.1)=0.9 で 90%とかなり高くなります)

2,(仮の数字ですが)1%の感染者のうち無症状の25万人(全人口の0.2%)からの感染を防ぐのために、一般的な公衆衛生習慣(マスク・手洗いなど)を全国民に守ってもらう。

3,クラスターに集中して徹底的に対策する。

というこれまでの日本の方針はそんなに的外れとは思えませんがいかがでしょうか?

日本の比較的低い感染率は、人種的なこととかいうことではなく、そういうことではないかと思うんですが

・・・どうも我々日本人は、未だに海外コンプレックスから抜け出せてないのか、いかに日本がダメかを言い合うか、

逆ギレして「日本万歳!COOL JAPAN!!」と、両極端になってしまうことが多いようです。