「出張経理課長」 布川昭文の「これでじゅうぶん! 社長の経理知識」第12回「目からウロコがはぎ取れる! 経営に役立つポイント」~利益計画立案の際に役立つ損益分岐点の考え方~

こんにちは! エースラボの布川昭文です。                       普段は「出張経理課長」として、契約企業様の日々の経理処理や毎月の状態把握に欠かせない月次試算表作成のお手伝い、さらには資金繰りや、資金調達に関わる支援業務を行っております。                                     これまでの経験をもとに、「経理業務に直接タッチしない社長さんでもここだけは知っておいてほしい」「ここを押さえておくと経営が楽になりますよ」というところをピックアップし、なるだけわかりやすく、簡略にお伝えしていきたいと思います。

今回は前回に引き続いて「損益分岐点」について触れたいと思います。先ずは前回のおさらいから始めましょう。損益分岐点とは
損益分岐点とは、収益と費用が同額で、利益がゼロになるポイントということでした。算式は固定費を限界利益率で除して求めます。この式が基本となりますのでしっかりと覚えるようにしてください。

 損益分岐点=固定費÷限界利益率

損益分岐点がいくらになるのか、下記事例を参考に実際に計算をしてみましょう。
【事例】
 売上高 1,000
 変動費  300
 限界利益 700(70%)
 固定費  600
 経常利益 100

上記のケースの損益分岐点を求めてみましょう。損益分岐点は「固定費÷限界利益率」で求められます。よって、固定費600千円÷限界利益率70%≒857千円となります。実際に合っているのか検証してみたいと思います。
 売上高  857
 変動費  257
 限界利益 600(70%)
 固定費  600
 経常利益  0

上記で計算をすると、経常利益が0になります。よって正しいことが証明されました。

次に、様々な場面で損益分岐点がどの様に変化していくのかを見ていきたいと思います。

変動費が変化した場合

①増減率の変化
上記【事例】で、資材の高騰で材料費が5%増加した場合、どの様になるかかを見てみましょう。材料費が5%増加すると変動費が300千円→315千円と変化します。同様に限界利益も700千円→685千円へ、限界利益率も70%→68.5%と変更します。

 売上高 1,000
 変動費  315
 限界利益 68568.5%
 固定費  600
 経常利益   85

この場合の損益分岐点は、固定費600千円÷限界利益率68.5%≒876千円となり、当初よりも19千円ほど損益分岐点が高くなります(876千円-857千円=19千円)

②増減額の変化
次に材料費が50千円増額した場合を見てみましょう。
    売上高 1,000
 変動費  350
 限界利益 65065%
 固定費  600
 経常利益   50

変動費は300千円から350千円に増額になります。この時の限界利益は650千円、限界利益率は65%となります。損益分岐点は、固定費600千円÷限界利益率65%≒923千円となり、当初より66千円高くなります(923千円-857千円=66千円)。

③単価の変化
次に材料費の単価が変化した場合を見てみましょう。材料費の単価が30円から25円に変更した場合、事例は下記のように変更になります。
 売上高 1,000
 変動費  250
 限界利益 75075%
 固定費  600
 経常利益 150

この場合の損益分岐点はどの様に変化するかを見てみましょう。損益分岐点は固定費600千円÷限界利益率75%=800千円となります。当初の857千円よりも57千円低くなったことが読み取れます(857千円-800千円)。

上記から読み取れることは、限界利益率の高低により損益分岐点が高くなったり低くなったりします。そんなの当然だよと思われる方も多くいらっしゃると思います。しかし、利益を生み出すためにすべきことは?と質問をすると、「売上を増やす」とか、「固定費を減らす」といったことだけを話す経営者もいます。確かに具体的な行動が伴った計画があれば売上高を増やすことは可能かとは思います。しかしながら、「頑張ります」などの精神論だけでは通用はしないのです。しっかりと限界利益を生み出せるように変動費の見直しを行うことも重要になります。

固定費が変化した場合
①増減率の変化
次に固定費が変化した場合を見てみましょう。先ずは増減率が変化した場合を見ましょう。固定比率が10%増加した場合、事例のケースは下記のようになります。
 売上高 1,000
 変動費  300
 限界利益 700(70%)
 固定費  660
 経常利益   40

固定費が600千円から10%増加して660千円になります。この場合の損益分岐点は固定費660千円÷限界利益率70%=943千円になり、固定費600千円の時の損益分岐点857千円と比較して86千円高くなります(943千円-857千円)。

②増減額の変化
次に固定費の金額が変化した場合をみてみましょう。固定費が50千円減少した場合には、事例は下記のとおりに変化します。
 売上高 1,000
 変動費  300
 限界利益 700(70%)
 固定費  550
 経常利益 150

固定費が600千円から50千円減少となり550千円になります。この場合の損益分岐点は固定費550千円÷限界利益率70%=786千円となります。固定費が減少したことで、損益分岐点も857千円から786千円と71千円低くなっております。経費が低くなったので当然の結果ではありますが…。

このような事例は利益計画の立案の際に非常に有効です。例えば、現状よりも経費を300千円多く計上しなければならなくなった時に、現状の売上に幾らプラスにすれば良いかなどといった際にも活用ができます。

 必要経費300千円÷限界利益率70%=429千円となります。
売上高を429千円増加させないと経費300千円を増やした場合、赤字になってしまうということです。

このように損益分岐点を使うことで、現状が見えてくるようになります。
次回ももう少し損益分岐点について触れたいと思います。お楽しみに!

ABOUT US
布川 昭文
中央大学経済学部卒業後、東証一部上場企業の建設会社に入社。支店経理、本社人事部で勤務。その後、会計事務所、シンクタンクにてスタッフ系業務全般及び調査・研究業務に携わる。シンクタンク時代には流通業の経理担当者向けのセミナー講師を定期的に務めた。また、2005年共著にて「経営計画・利益計画の立て方進め方(ISBN-10:4534039751)」執筆。 2021年 エースラボの理念「中小企業のパワーアシスト」に共感し参画。いままで様々な企業の業務改善に携わる。趣味で合唱をたしなみ、ベートーヴェンの第九をこよなく愛する。週末、ぶらぶらとドライブしながらの温泉巡りをすることもすき。