オブジェクト指向プログラミングに学ぶ 「オブジェクト指向経営」のススメ2 クラスの活用でクッキリした組織を手に入れよう

営業部長「おら A社のクレーム処理行ってきたよ!」「改善計画書まで書かされて・・なんで営業が品管の仕事しなきゃいけないんだよ(怒)」・・

品管部長「いやいやいやいや、それ営業の仕事ですから・・前のときもそう言いましたよね。品管がやるのは社内調査とデータの提出まででしょ(呆)。前任の営業部長はしっかりわかってたんだけどな・・」

営業部長「前のアイツは技術カジッてたから自分で書きたかっただけだろ!おれは営業一筋っ!こういうの苦手なの!」

品管部長「営業つったって、売ってるもののことぐらいちゃんと解ってなきゃダメなんじゃない??」

営業部長「なんだと! もいっぺん言ってみろい!!(怒)」

・・・こんなような事・・・もしかして御社でも起きてませんか?

そんな「業務上過失すれ違い」の救世主、と私が勝手に思っているのが、前回書かせていただいた「オブジェクト指向による業務の棚卸しと再構築」。

「オブジェクト指向経営」の解説編として、オブジェクト指向の四大概念「クラス」「継承」「カプセル化」「ポリモーフィズム」の中から、今回は一番の基本である「クラス」についてお話していこうと思います。

前回説明したとおりオブジェクト指向はコンピュータプログラミング上の考え方です。

なので最初にコンピュータプログラムでの「クラス」についてものすごくざっくり説明しますと・・

1)クラスは設計図あるいはひな形に相当するものです。

2)そして、この「クラス」によって実際にコンピュータの中で生成され、役割を与えられたプログラムたちが「オブジェクト」です。

そしてこの2つによく例えられるのが「鯛焼きの型」と「鯛焼き本体」の関係です。

そう、鯛焼きの型が「クラス」、鯛焼きそのものが「オブジェクト」。

鯛焼きは御存知の通り、一個一個手作業で作らずに、材料を型に入れて作りますよね。

さて先程ご登場いただいた、営業部長さんと品管部長さん。

どちらも仕事一本のマジメな会社員。

部下からも信頼され、良き市民でもあります。

なのに、どうしてたびたびこういった揉め事が起きてしまうんでしょう?

おふたりとも、会社を悪くしようなんて思ってないし、サボって楽をしようとも思ってないはずです。

本当に不思議ですよね〜

あれ〜? もしかして、お二人の部長さんの頭の中で営業部の役割と品質管理部の役割が食い違っているんじゃありませんか?

お互いに「品管はこういうもの」、「営業はこういうもの」という相手に対する勝手な「こうあるべき論」みたいのがあって、それを押しつけあってるんじゃないですか??

その原因って会社に組織図はあるものの、各部門や役職の具体的な職務が明文化されてなくて、「そこは互いのあうんの呼吸で」とかなってるからじゃありませんか?

もしかして、部長とか課長の役割も明確になってなくて、部門間だけじゃなくて、部門内でも「業務上過失すれ違い」が頻発しててその調整そのものが仕事になっちゃったりしてるんじゃないですか??

もしもですよ、鯛焼きが鯛焼き器なしで、匠の技でイチから鯛のカタチの皮を作り、その中にあんこを詰めて作るものだったら、めちゃめちゃ効率悪くなりそうです。

いったい1個いくらで売らなきゃないんでしょうね(笑)。

と「鯛焼き」が出てきたところで、早速オブジェクト指向的アプローチでこの問題を解決してみましょう。

まず経営陣は鯛焼きの型(クラス)として「職務規定」や「役職規定」をしっかり作りこみます。

そして社員やグループは、それに従って行動する鯛焼き(オブジェクト)としてクラスに従い、職務に邁進する。

これまでのように自己イメージや前任者からの申し送りと経験で、それこそ匠の技で作られる鯛焼きのように営業部や品質管理部の部長に成長していくのではありません。

まず「営業部の部長」「品質管理部の部長」という業務の定義(鯛焼きの型)があり、そこにAさんBさんという人材(材料)を流し込んで、「営業部のA部長」「品質管理部のB部長」が出来上がる、というイメージです。

もちろん材料になる人材によって多少の風味の差は出ますし、適正のない材料を使うのはお互いにとって良くないのでそこは注意が必要です。

しかし適切な材料なら基本は同じ形の鯛焼き(役職者)が出来上がります。

さらに同じ材料であっても、鯛焼きになったり、今川焼きになったり、人形焼になったり・・使う型によってその働きが変わってくることにもなります。

つまり必要に応じていろんな型を作れば、同じ人材でも色々な働きが可能になります。

一見まだるっこしいように見えるやり方ですが、こうして「鯛焼きの型=クラス」を作っておくことで、中小企業にありがちな属人的な組織からの脱却を図ることが出来ます。

例えば

①個人がそれぞれ自分の部門、役職の仕事だと思っていることをやっていて、責任の所在がハッキリしない。

②マネージャーが変わるととたんにパフォーマンスが変わる。

③それぞれがタコツボ化してグループをまたぐ人事異動がやりにくい。

といった問題が

①それぞれの職務が明確なので責任の所在が明らか。

②一定の能力さえあれば誰がマネージャーになっても高パフォーマンスを維持。

③本人の希望や組織の必要に応じ、グループをまたぐ人事異動が容易。

というふうに解決できるんです。

さて早速クラスの概念を取り入れた業務指示書が活用されたこの会社ではさっきの話がこんなやり取りに

営業部長「A社さんのクレーム処理行ってきました! 品管さんがつくってくれた解析と改善報告書をすぐに理解してもらえて、今回納入分こそ返品になったけど、改善品を納品する約束でロット増やしてもらえたよ。」

品管部長「営業部がしっかりしたプレゼンスライドに編集してくれたからね。これでしょげてた製造部の士気も上がるんじゃない?」

これまでのように暗黙の了解で役割が決まる伝統的な会社とは一線を画す、それぞれの役割が文書(クラス)ではっきり規定されている会社。

実は当社も開発途上ではありますが階層的に明文化されている規定のおかげで以前より堅実かつ柔軟に運営されていると思います。

つまり今回の私の主張は

「それぞれの役職の役割や業務が、暗黙の了解ではなくて、クラス(鯛焼きの型)で明文化されている、オブジェクト指向で組織運営すれば、いろいろやりやすいんじゃない?」

ということなんです。

これをお読みになって「自社独自の理想のクラス(鯛焼きの型)をゼロベースからしっかり構築したい」、と思われた方はぜひトライしてみてください。

自分たちだけでやるのはどうもなぁ、と思われた方は、どうぞお気軽にご相談ください。

スムーズにすすめるヒントやテンプレートの提供から、具体的な作業の代行まで、幅広くお手伝いできます。

もちろん相談だけなら無料です。

おまけ

クラスは、演劇やドラマのシナリオにも例えられると思います。

同じシナリオ(クラス)なら違う役者さんでもセリフや筋書きは一緒。

同じ役者さんでも違うドラマに出れば、役割は別。

どちらのケースでも役者さんによって多少個性が出てきますが、別のドラマで刑事役だったからといって、医師役なのに拳銃ぶっ放したりはしないですよね(笑)