最近「DX」という二文字を新聞やビジネス誌で見かけることが多くなりました。
ご存じの方も多いと思いますが、このDXはマツコのデラックスの略です、というのはウソで「デジタル・トランスフォーメーション」のこと。
「デジタル・トランスフォーメーション」は2020年春にバンダイが発売を開始した変身ロボットで、、あ、はい、これもウソです。
「DX=デジタル・トランスフォーメーション」は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念で、 2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされるものだそうですよ 。
平たく言えば、
「いまアナログでやっていることをどんどんデジタル化することで効率の良い、楽しい生活を送りましょう」
ということ。
詳しくは経産省のサイトをみていただくと良いと思います(彼らは自身のDX化を「METI DX」と呼んでいます。)
DXを中小企業風に捉えると「いまアナログ(人手や紙)でやっていることをどんどんデジタル化することで効率の良い、生産性の高い企業にしましょう」ということになるかと思います。
一言で言ってしまえば
「早くデジタル化しましょう」。
エースユナイテッドの中核事業会社で母体でもあるミカド電装商事は売上規模や業務内容の割にはデジタル化が進んでいると思います。
私が会社のデジタル化に着手したのは1989年(21年前)、会社に戻ってすぐ。
なんせ当時の総務部長さんは電卓で計算したあとソロバンで検算するような、「経理一徹」みたいな人でしたから、会社にはパソコンはおろかワープロ(懐かしいひびき)さえありませんでした。
直前まで勤めていた会社で、当時出回りだしたパソコン(IBM5550というマシンでした)で作表やグラフ作成を担当していた私は、まず和文タイプ屋さんに頼っていた契約書や、複写紙に手書きだった見積書をなんとかしようと、ワープロ専用機を2台買ってもらいました。
幸い社員のみんなもすぐ慣れてくれて、書類がキレイで見やすくなったことはもちろん、これまでの手間
1,契約書 いちいち手書きの原稿を作り、和文タイプ屋さんに持っていく、取りに行く、ミスが見つかったら訂正してもらう(向こうのミスでも有料でした)。
2,見積書 下書きしてから清書。しかも書き間違えたらイチから書き直し。
がなくなって、作業効率が大幅にアップしました。
偶然でしたが当時よくお仕事を頂いてた大手エンジニアリング会社さんと同じ会社のワープロにしたため、施工書類などのデータに互換性があったことも良かったですね。
そんなことから始まって、勢いに乗った私は当時150万くらいしたパソコンとラインプリンタ(知ってます?)を買ってもらい、顧客データベース作成や、営業案件をスプレッドシート管理(当時はLotus-123が主流でした)でデジタル化
さらに、経理や販売管理もパッケージソフトで行えるようにしていきました。
機嫌よくデジタル化を進めていた当社と私ですが、ここでこんな問題に突き当たります。
それは、「パソコン待ち」
1台しかないパソコン、2台しかないワープロの順番待ちで、今で言うボトルネックが発生、作業効率がなかなか伸びないという問題が発生したのです。
台数を増やせば解消するかというと、今度はデータが分散する問題が発生します。
「おーいあのデータどこにある?今日中に完成して印刷しないと!」
「1階の凸山さんのパソコンです」
「じゃ 凸山さんにフロッピーに落として持ってくるよう頼んで」
「凸山さん、出張で明日戻りです」
「ぎゃふん」
当時のデータ受け渡しは、フロッピーディスク(今だったら1.44MBのUSBメモリに相当)などの媒体に落として手渡すという「スニーカー ネットワーク」が主流。
Windowsはまだ発売前、今のようにパソコンでネットワークを組むには、まだ高価だったサーバーやネットワーク機器の購入や、これも高価だった専用ソフトが必要。
いわゆるネットワーク化は大企業ならいざしらず、我々にとってはまさしくあおぎ見るしかない「高嶺の花」でした。
しかしそんなある日、あるアイディアが偶然目の前に飛び込んできます。
個人的に興味を持っていたアップル社のMacintoshを見るために訪れたとあるショップで、私は見慣れないものを見つけます。
「この2台のMacをつないでいるウドンみたいなケーブルなんですか?」
「ああこれ? LocalTalkといいましてね、阿呆で独りよがりなDOSとちがって、Mac同士はこのケーブルを通じてデータを共有できるんですよ フン」
真性のオタクらしく、Windowsの前身であるMS-DOSを散々DISりながら、彼は鼻を鳴らします。
「例えばですけど、台数を増やすことはできるんですか??」
「もちろんですよ、ただアダプターは必要ですけどね。それはデイジーチェーン、というつなぎ方で、Macは民主的なコンピュータだから、サーバーなんて中央集権的なものは必要ないんですよ、フンフン」
しかーし 当時Macは「パソコン界のポルシェ」と呼ばれ、当時日本で主流だったNECのパソコンと比べて価格は3倍以上、高嶺の花であることには変わりありません。
ところが1994年、廉価で満足の行くMacintosh LCシリーズが発売され状況は一変します。
一人1台は無理でしたが、当社はデイジーチェーンによるネットワークコンピュータ二人で1台体制を実現(ターンテーブの上にのせてとなり同士で共有)。
当時Macの人気ソフトだったデータベース構築ソフト「ファイルメーカー」を使った、見積もりシステム、受注・売上管理システム、顧客・機器在籍管理システム、さらに点検・施工報告書作成システムを構築します
これは自慢じゃないですが一人で全部やりました。
1つ作るのに、モノによりますが約一週間、ほとんど誰とも口を聞かずにやってましたね。
あの粘りと根性は一体どこに行ってしまったのでしょうか??
その結果、基本保守も全部自分でやるハメになりましたけどね。
私が勝手に名付けた当社の社内ネットワーク「INNER NET」は、安価になったノート型Macで一人1台体制を実現し、マシン同士の接続も速度の出るLAN(Ethernet)接続に、さらにPower Macと言われる当時の高性能機をサーバーに使った社内ネットワークとして独自の進化を遂げ、1999年頃まで使われました。
しかし、時代の流れとともにお客様のIT化も進み、書類を印刷ではなくデータを直接(フロッピーディスクでですが)お客様にお渡しする必要が生じため、当社もWindows98あたりから、機器をWindowsマシンに徐々に入れ替えはじめます。
そして、当社ネットワークをADSL(当時最速のメタル回線)を使ってインターネットに接続したことで、名実ともにINNER NETはその使命を果たし終えます。
こうやって独自の発展を遂げていた当社のネットワーク環境は、2000年前後には、Windowsマシンと一般的なLANケーブルによるごくごく普通のスタイルに落ち着いていったのです。
そういうわけで1990年前半、世の中小企業がデジタル化・ネットワーク化にちゅうちょしていた数年間、私達はその果実をたっぷりと享受しました。
しかし今にして思うと1995年にWindows95やNTサーバが発売された時に、「乗り換えが若干遅れたなあ」という後悔も正直あります。
実際にそのころになると、社員からも「データをお客さんに渡せない」「ネットワークの調子が悪い時、社長がいないとほぼアウト」などの悪評が聞こえてきてはいたのです。
今で言うところの「ガラパゴス化」ですね。
しかし、私には独自に発展させた社内システムへのこだわりがありました。
受注から売上管理まで一回の入力で済み、日計表や合計請求書も一発で作れる「ミカド受注売上システム」、メーカーも見学に来た「機器在籍管理システム」、工事報告書を作るとすべてデータベース化される「工事システム」を作ったのは誰だ?文句あんのか⁉
システムへの批判は社長である自分への批判になるぞ‼
という気持ちがなかったわけではありません。
また、Macと比べると何かと野暮ったいWindowsに乗り換えることにも何らかのためらいがあったんでしょうね。
結果社員に不便を強いていたわけですから、恥ずかしいことこの上なしです。
さて、そんな「栄光と挫折」を体験をしたからこそ言える中小零細企業のDX必勝法をお読みの皆様だけにこっそりお伝えいたします。
中小零細企業のDX必勝法1 「DXは貧者の核兵器」
パソコンは高い?環境を整えるのにお金がかかる?馬鹿言っちゃいけません。
DXは最少の費用で最大の時間効果を得られるんです。
DXはあなたの筋肉質すぎる組織に「神経」や「感覚器官(目鼻)」を作り無駄を省きます。
出張無しで行えるオンライン打ち合わせの意味は「交通費削減」ではなく「移動時間削減」なのです。
たとえ100万かかったとしても、5年使うとして毎年いくらのコスト削減を生み出し利益を作ることになるか、考えてみてください。
中小零細企業のDX必勝法2 「表面アナログ」
あなたが先行してDXした場合、お客様はまだ十分DX化が進んでない可能性があります
例えば個人営業のお寿司屋さんがDX化して「ご注文はタブレットで承ります」なんてことになったらご常連のお客は喜びますか?
注文はこれまで通り「親方 こっちにコハダ」「アイヨ!」って感じのままで、ネタケースからコハダを一枚取ると、センサーが感知し記録。
季節や気温・湿度とよく出るネタの関連性や、お客様個人のデータなどを蓄積して、仕入れのロスを減らし、馴染み感のある接客に役立てるのが中小零細のDX。
具体的にはFAXによる問い合わせはお客様がFAXを使い続ける限りずーっと続く
斬新な新製品でも開発しない限り中小零細のお客様は既存のお客様がベースです。
既存のお客様とのインターフェースは基本これまで通りでおねがいします
「見た目はソフト」「顧客をブッちぎらない」を肝に銘じてください。
中小零細企業のDX必勝法3,「中だけDX」
さっきもちょっと書きましたが、お客様から見えないところは徹底してDX
具体的には、見積もり作成、受発注、スケジュール管理、ドキュメント管理、社内情報共有、経理処理などの社内業務を真っ先にお金をかけてDXしてください
殆どの中小零細企業はこのあたりの生産性が大企業と比べてかなり劣っています。
大企業と比べて優秀な人を採用できる確率は高くないんですから、このへんで稼がないと、一人あたりの生産性(=粗利)は上がりません。
明治維新の薩長軍は農兵主体でしたが、進んだ装備で幕府軍に打ち勝ちました。
もうおわかりですよね。
「外見はソフト 中身はビッキビキ」これが中小零細のDXです。
中小零細企業のDX必勝法4 「PCはパソコンにあらず」
確かに「PC=パソコン」は「パーソナル(個人用)コンピュータ」の略ですが
PCはネットワーク化されて、データは共有化されて、初めて威力を発します
担当者が作った資料は組織の所有物ですから、会社のサーバーに保管してみんなが見れるように、決して個人のパソコンにデータを溜め込まないようルールを徹底してください
ちなみに現在当社では社員がいつでもどこでもデータにアクセスできるよう、クラウド(Google Drive)の活用を進めています。
中小零細企業のDX必勝法5 「最新が最強」
先にお伝えしたとおり、ネットワーク化でせっかく先行したミカド電装商事は、私が独自方式にこだわったおかげでWindowsへの以降がちょっと遅れました。
今使っている機器ややり方にとらわれず、最新のものが安く使えると判断したら、躊躇なく入れ替えを検討してください。
そのためにも社長は欲しい機能や、情報にのみこだわり、機器やソフトについては、他の人に任せたほうがかつての私のようなことにはなりにくいと思います。
中小零細企業のDX必勝法6 「Webは等身大で」
御社のWEBを見るのは基本従来からのお客様と、物理的に名刺を交換したお客様。
(解析すればすぐ解ることですが、御社のWebサイトを訪れる人は業種や品名ではなく、御社の名前で検索しています)
表面をどんなに取り繕ってイケてる(風の)サイトを作っても相手はあなたを知っています。かっこいいWebよりも、普段の御社が見える等身大のWebを作りましょう。
社長の写真入り挨拶、スタッフ紹介、歴史がある御社なら、そのストーリーとか、、
御社と関係がある方々が御社をより深く知ることのできるツールに仕上げてください
新しいお客様からの問い合わせはあったらいいなくらいの気持ちで。
実際新規問い合わせの9割がたはセールスからの連絡です。
コロナ禍で商習慣が変化し、5G通信やIOTが一般化するここ1,2年が中小零細企業DX化のラストチャンス。お互い乗り遅れないようにしたいですね。