経営やってみたラボ、7 「売上を追わずに売上を上げる法」

前回は業績回復の特効薬「期末手当」について書かせていただきました。

今回は、期末手当の効果が出だした2008年ごろから3年ほど、当社は売上は増えるものの利益が思うほど増えない症状に陥りました。

6億前後で推移していた売上は7〜8億円台まで伸び、一見仕事は順調に取れているし、皆はせっせと仕事に取り組んでいるし、個々の仕事の売上総利益(粗利)もそれなりにあるのですがなぜか営業利益が思ったほど上がらない

そんなある日、私が遠方の営業から事務所に夜8時頃に帰り着くと、一人の社員が残っていました。

「あれ☆☆くん、まだやってんの? もう帰れば?」

という私の問いに彼はこう答えました

「〇〇電気さんからの電話を待ってるんです。8時過ぎ頃電話するとのことだったので。」

その瞬間、私はあることに気づかされました。

うちの営業社員って、もしかして「来た仕事をやっている」だけ?

当時、見積もり案件から受注までを管理するシステム「ソフトブレーン社製のeセールスマネージャー」をすでに導入済みでした。

各担当のスケジュールと各案件の進捗を複合的に管理できるこのスグレモノのシステムのおかげで当社はかなり取り漏らしをへらすことが出来ていて、それが売上増につながっていたのです。

しかし当社の営業社員はいわゆる「営業(受注活動)」だけでなく、受注後の製品の最終仕様打ち合わせや、製品手配、工事手配、書類作成などの業務に仕事時間の大半を費やします。

ここの工程がすっかり「お客様からの指示待ちの業務」により伸び切ってしまっているおかげで、お金をかけているのにすぐにお金を産まない「仕事の仕掛品(在庫)」がどんどん増えてしまっていたようなんです。

さらに受注が増えれば増えるほどあちこちにボトルネックが増え、いわゆるケツカッチンの仕事が発生。

社員が黙々と働いても残業や外注などの変動費がどんどんかさみ、見た目の粗利ほど営業利益が増えない、というわけです。

そこで私は、受注から納品(施工)・売上までの工程もeセールスマネージャーの管理項目に加え、毎週の会議で決めたゴールから逆算したスケジュール通りにこちらかからお客様に働きかけていくように仕組みを改めました。

会議の名前はPDCAの「CHECK→ACTION→PLAN」からとって「CAP会議(商標登録予定・ウソ)」

当然のごとく「自由を愛する」我が営業社員からは当初反対されました。

「納期はお客様の都合で決まっているんだから、その間をいくら詰めてもしょうがないでしょ、意味ないですよ!」

という風にです。

「だからいつも最後に大慌てするんでしょ。夏休みの終わる日が決まっているからって手をこまねいてるとどうなるか、皆わかってるよね。」

「工期は縮められなくても、こちらからお客様に声をかけていって隙間に計画的に他の仕事をきれいに詰めていったらムダが減るよね。」

と説得しCAP会議を回してみると、思惑通りのことが起こり始めます。

これまでは、急なお客様の依頼(ただ待っているんだから当然です)に振り回された営業と、急な工事で余裕がなくなる工務部の間で怒号が飛び交っていた工程調整会議が段々とスムーズに回り始めます。

☆当時はホワイトボードで月間の工程管理をしてましたが、夜くたびれ果てて帰ってきて、翌日の新たな工事出張が書き込まれているのに激怒した工務部員がホワイトボードを全部消してしまったり、工務部に自分の工事依頼を受け入れてもらえなかった営業部員が怒りの持っていきどころを失ってドアを蹴って壊してしまったり、なんてことが本当にあったんです。☆

すると、これまで入ってこなかったお客様からも徐々に注文が増え始め、当社の売上はこれまで考えたこともなかった10億を超え、利益率も徐々に安定しだしたのです。

不思議ですよね、受注よりもその後の業務に力を入れたほうが受注が増えるなんて・・

何が起こったのかわかりやすくたとえ話をします。

色とりどりでトゲトゲの金平糖がいっぱいに入っているコップがあるとします。

もっと金平糖を入れたいときあなたはどうします??

上からムリに金平糖を詰めても、ちょびっとしか入りませんし金平糖のトゲが壊れてしまいます。

実は金平糖の入ったコップの底をトントンとテーブルに何回かつくだけで、金平糖同士のすき間がつまり、いっぱいに入っていたと思っていた金平糖の嵩(かさ)は7〜8割程度になってしまいます。

そこに新たな金平糖を詰め、またトントンしてまたもう少し金平糖を詰め(以下同文)

色とりどりの金平糖は一つひとつの仕事、コップの大きさは会社のキャパシティ(生産能力=人数×時間、会社によっては生産設備もはいるでしょう)というわけです。

後でわかったことですが、この一連の改善によって私達は「スループット(時間あたりの生産性;私的解釈です)」を向上させていたわけですね。

「スループット」についてはエリヤ・ゴールドラット博士の「ザ・ゴール」に詳しいですが、もっとかんたんに知りたい方は中野明さんの「制約理論がよく分かる本」を参照ください。

次回は、「何も決まらない会議からEXIT」について書かせていただきます。これは結構恥ずかしい当社の黒歴史から始まります。