経営やってみたラボ、11 「分けて考えたらこうなった 〜分ければ解る 分解の話〜」

前回は社内を全部一緒くたにして分けていなかったばっかりに、社内の戦略と戦術が混乱し、2期連続の赤字決算になってしまったことをお話しました。

今回は、私が節目節目に分けて考えるキッカケになった3つの出会いといただいた助言、そして助言どおりやってみた結果についてお話してみようと思います。

私自身の半生を振り返ってみると、もともと分けて考えるのがあんまり得意ではなかったと思います。

ごく小さな頃、大好きなガムとあられを一緒に食べてみてひどい事になったことがあったり

小学生のころ、国語の時間に理科の教科書を読んでいておこられたり

長じて高校時代、移動教室での授業中に寝てしまい、目が覚めたら次の授業中だったり(しかも上級生の)

そんな私を心配した父からは「味噌もクソも一緒にするんじゃない」とリアルに考えるとけっこう気持ちが悪くなる注意を受けたりしていました。(そのぶん、包括的に考えたり、複数の事柄から一貫性のある流れを読み取ったりするのは比較的得意だと思いますが、それはまた別の機会に。)

1,西田さんに教えてもらったセグメンテーション

バブル直前の1980年、最初に入った会社日本電池(現GSユアサ)で、2年間営業部を体験した私は企画に異動となります。

そこで指導役についてくださったのが、後にGSユアサの副社長になる西田さん。

私はそこで「セグメンテーション」という言葉を彼から教えられます。

「いいか沢田くん。 企画を立てるときは対象となる市場を様々な角度から細かく属性別に分けて考えるんだ。それを「セグメンテーション」って言うんだよ。」

そう言われた時の正直な感想は、、、

「はあ? おんなじ材料を分けたところで 中身はおんなじじゃん!!」

という若気の至りというか「夜郎自大」な今考えるととても恥ずかしいものでした。

しかし、彼が様々な材料(数字)をセグメントして鮮やかに料理(分析)していく姿を目の当たりにして、いつの間にか私はセグメンテーションの信奉者に生まれ変わっていきました。

私が自分の会社に戻る前の、卒業論文的な最後の仕事は、守秘義務があると思うので詳しくお話はできませんが、ある商品を機種、シェア、分野別など様々な角度からセグメントし、過去にさかのぼって数値を調べ上げ、時代ごとに異なっていた計測単位を統一し、そこから需要予測をする、というものでした。

先輩方が感覚的に感じていたことを数値で証明できたことは結構嬉しかったですね。

その後セグメンテーションから発展し、顧客層を商品や分野を組み合わせて一元的にマネジメントする、SBU(戦略的事業単位)という考え方が取り入れられます。

このSBUは私がミカド電装商事に戻り営業部を再編する時に大変役に立ちました。

ミカド電装商事独自のSBUは常にブラッシュアップされながら30年以上使われ続け、社長が交代した今も、当社の計画策定や実績の分析や予測に大きな力を発揮しています。

2,小松さんに教えてもらった「分ければ解る」「分解」

当社が2005年に導入した営業支援ソフト「e-セールスマネージャー」の導入支援をしていただいた、ソフトブレーンサービスの小松弘明会長。

彼からは、営業の一連の流れをきちんと分解して考えることを教えていただきました。

前にも一度触れましたが、おかげで我々は自身の営業業務を「案件情報収集」「受注活動」「受注から納品に至る一連の業務」しっかり「分けて考える」ことができるようになりました。

おかげで当社の生産性は急上昇。

営業利益を3年で5倍まで増やすことが可能になったのです

そのお礼も兼ねて5年ほど彼が主催する「プロセスマネジメント大学」仙台校の運営・講師をお手伝いさせていただいたことはとても良い経験になりました。

3,山地さんに教えてもらった、事業の分け方

事業拡大につまずいて赤字決算となった翌年の2017年度。

回復の兆しが見えない中、私は途方に暮れて迎えることになります。

そのころ私は偶然ヤマチユナイテッドの山地章夫社長に出会います。

山地さんに教えてもらった、事業の分け方は「ホールディングスから事業子会社を次々と作って多角化する」というもの。

これまで顧客をSBUでセグメントし、業務の流れを分解してそれ相応の成果を出してきたつもりだった私。

どうやら事業を分けずに次のステップに向かおうとしたばっかりに、今回の苦境に陥っていたようです。

山地さんのアイディアに徐々に惹かれていった私は、彼らが主催するセミナーに参加し、勉強を進めました。

そして2017年後半、2期連続赤字決算の見通しの中、会計事務所の支援を受けてホールディングス化を実行します

その結果、元本体のミカド電装商事は営業と技術・工事だけの事業子会社になりました。

事業子会社になったミカド電装商事の社員は、以前のように本来の仕事に集中し、品質重視で打ち込むことができるようになっていきます。

そして、ホールディングスのエースユナイテッドにはミカド電装商事の総務・企画部門を引きあげ、経営戦略や新規事業の育成にあたらせることにしました。

これでHDエースユナイテッドの役員・社員は既存事業と新規事業のバランスを見ながら総合的な運営が可能になります。

分けて考えることで、自分の事業分野に集中できるようになった各グループ社員たちの気持ちがすーっと落ち着いていくのが肌で感じられました。(どうやら私の考えていた全社統一の意識改革は完全に間違っていたようです)

2017年度は赤字に終わりましたが、翌々年の2018年度に業績は見事復活、2019年度はおかげさまでグループでもミカド電装商事単体でも、みごと最高益を達成できました。

「事業もセグメンテーションをしっかり行って、分けて考える」

社員も私もそれぞれの立場で分けて考えられるようにするのは大切だなぁ。

ということをそれなりの授業料を払って知った私、というわけです。

皆さんも事業拡大計画を立てるときには、そんなことのないようにてくださいね。

次回は、「ホントにやってきたカエルの王国にバブル崩壊」と題して、バブル崩壊前後の体験を書かせていただきます。

☆HD化のことは、

VOL2「なぜ私は自分の会社をホールディングス化したのか? その効用と課題(1)」

VOL3「なぜ私は自分の会社をホールディングス化したのか? その効用と課題(2)」

に詳しく書きましたのでごらんください